使えなくはないけれど、信託を使う必要性はあまりありません。
最近、なぜか「信託が軍用地に適している」という謳い文句で集客を図っている士業者がいますが、注意が必要です。
信託は、モノの管理と収益を分離する制度であり、信託のメリットの1つには管理を受託者に集約できることが挙げられます。しかしながら、軍用地は、国が一括で借り上げ、地域ごとに軍用地主会が管理を行っています。したがって、貸すことによる不便は基本的に軍用地主会が負担するため受託者の必要性は乏しいです。
また、信託のもう1つのメリットとして、不動産の名義を分散させないという点もあります。しかし、軍用地の場合、一部の返還が予定されている地域を除けば、超長期的に貸すことが前提となっている(前提とならざるを得ない)ため、返還後の土地の利活用のために名義を集中させておくメリットより、軍用地主会から賃料を受け取った受託者が、受益権者に分配をする手間というデメリットの方が大きいと感じるケースがほとんどではないかと思います。
メリットがあるとすれば、受益権複層化信託において、元本受益権の評価額を低額に見積って生前贈与した場合の節税効果が挙げられます。もっとも、この場合の税務処理については、不明確な点も少なくなく、特に信託終了時における課税の発生が不透明です。
以上から、軍用地の場合には、近い将来返還が想定され、なおかつ、その際に名義を集中させておく必要があるケース以外では、信託を使うメリットは、通常ありません。